予防保全の仕事内容とは?具体的な業務や求められるスキルを解説

工場の機械が急に止まってしまうと、生産ラインすべてがストップしてしまいます。修理が終わるまでの間、製品を作ることができなくなり、現場全体に大きな影響が出てしまいます。そうした事態を防ぐために欠かせないのが「予防保全」という仕事です。

この記事では、予防保全の具体的な仕事内容や、未経験から保全エンジニアを目指す際に習得する技術について、わかりやすくご紹介します。文系出身の方や、これまで製造業とは関わりのなかった方にも読んでいただける内容になっています。

※本記事に記載されている労働関係法令や各種制度に関する内容は、記事執筆時点での一般的な情報です。実際の労働条件や契約内容は、就業先の企業や派遣会社によって異なります。詳細は最新の募集要項をご確認ください。

予防保全の仕事は工場の安定稼働を支える仕事

機械の故障を未然に防ぐ「予防保全」は、工場を止めずに動かし続けるために欠かせない仕事です。厚生労働省の機械保全技能検定でも、設備を点検して保全の計画を立てることは、保全を担当する技術者に必要な技術のひとつとされています。

工場では今、人に頼らない自動化やデジタル化が進んでいます。経済産業省などがまとめた「2026年版ものづくり白書」でも、多くの企業で工場のデジタル化が進んでいることが報告されています。設備投資や自動化の流れは今後も続くと見られ、その設備を維持管理するエンジニアの必要性はますます高まっています。

ロボットや自動化された設備は、人の手を減らせる一方で、それ自体を点検し、直せる人がいなければ動き続けることができません。工場の自動化が進むほど、その設備を保全するエンジニアの需要はむしろ増えていく、というのがエー・オー・シー(以下、当社)の見方です。

設備の保全という仕事がどのようなやりがいや将来性を持つ仕事なのかは、下記の記事でも詳しく紹介しています。

【関連リンク】工場での製造装置メンテナンスがもたらすやりがいと将来性の実態

「予防保全」と「事後保全」の違い

設備保全には、トラブルが起きる前に対応する「予防保全」と、トラブルが起きた後に対応する「事後保全」があります。どちらも設備を維持するために必要な仕事ですが、対応するタイミングと現場への影響が大きく異なります。それぞれの違いは次のとおりです。

予防保全

  • タイミング:設備が動いている間や、定期的に止めたとき(トラブルが起きる前)
  • 内容:異常な振動や音、温度の変化などを事前にチェックし、必要な対策を行う
  • 現場への影響:計画的に対応できるため、急な故障による生産ラインの停止を防げる

事後保全

  • タイミング:故障やトラブルが起きた後
  • 内容:部品の破損や動作不良が起きてから、修理して元の状態に戻す
  • 現場への影響:修理が終わるまで生産ラインが止まってしまう

出典)機械保全技能士 – 技のとびら(厚生労働省)

出典)2026年版ものづくり白書(経済産業省)

予防保全における3つの具体的な仕事内容

1. 設備の日常点検と定期点検

予防保全の基本は、日々の点検と定期的な点検です。マニュアルに沿って、設備がきちんと動いているか、部品に異常がないかを確認します。ノギスやマイクロメーターなどの道具を使って、部品のすり減り具合を測ることもあります。

点検でチェックするポイントには、次のようなものがあります。

  • いつもと違う振動や音、におい
  • 温度の変化や油の劣化
  • 部品のゆるみやがた
  • 動きの悪さ

こうした小さな変化に気づくことが、大きな故障を防ぐ第一歩になります。最初のうちは、先輩社員と一緒に点検を行いながら、どこを見ればよいのか、どんな状態が正常なのかを少しずつ覚えていきます。慣れてくると、音や振動のわずかな違いにも気づけるようになります。

点検作業でバインダーに記録をつける様子

2. 消耗部品の交換とメンテナンス

設備を長く使うためには、時間とともにすり減っていく部品を、決まったタイミングで交換する必要があります。たとえば、隙間をふさぐ役割があるゴム製の部品であるOリングは、定期的な交換が必要な部品の代表例です。

軸を滑らかに回転させるための部品であるベアリングも摩耗やサビなどが起きやすいため、状態を見ながら交換やグリスの補充を行います。どの部品がどれくらいの期間で劣化するのかを知っておくことで、故障が起きる前に手を打てるようになります。半導体工場などでは、クリーンルームの中で真空装置のメンテナンスを行うこともあります。

スパナなどの工具を使った設備メンテナンス作業

3. 機械の組み立てとセンサーの調整

保全の仕事では、工具を使ってコンベヤやモーターなど、部品を運んだり動かしたりする装置を分解し、点検してから組み立て直す作業も行います。使っているうちに部品の位置がずれることがあるため、ずれを直したり、センサーの感度を調整したりする作業も欠かせません。

組み立て直したあとは、実際に設備を動かして正しく調整できているかを確認します。工場の自動化が進むほど、こうしたロボットや搬送装置の保全を担当するエンジニアの役割も大きくなっています。

【関連リンク】産業用ロボットの保全とは?仕事内容や未経験からのキャリアパスを解説

予防保全の仕事に必要な主な技術

予防保全の仕事は、大きく分けて「電気系」と「機械系」の技術が必要になります。どちらも最初からすべてできる人はいません。研修や現場での経験を通して、少しずつ身につけていく技術です。

電気の基礎知識と回路図を読む力

予防保全の仕事では、電気の基本的な仕組みを知っておく必要があります。回路図を読んだり、配電盤・制御盤の中の構造を理解したりする力が必要です。テスターやクランプメーターなどの計測器を正しく使い、断線などのトラブルの原因を見つけて直す力も、研修を通して身につけていきます。電気は目に見えないため、最初は難しく感じるかもしれませんが、実機(実際の機械)を使いながら手を動かして学ぶことで理解しやすくなります。

制御盤の中の電気配線を確認する様子

機械の仕組みの理解と工具の正しい使い方

機械系の保全では、金属の種類や性質についての知識、そしてノギスやトルクレンチなど工具を正しく使う技術が欠かせません。歯車やベアリングといった機械の部品がどう組み合わさっているかを理解し、安全かつ正確に部品を取り付けたり外したりする技術を身につけます。工具の名前や使い方も、最初は覚えることが多いですが、日々の作業の中で自然と身についていきます。

こうした技術は未経験からでも一つずつ学んでいけるものです。設備保全という仕事全体の内容については、下記の記事でも紹介しています。

【関連リンク】設備保全は未経験から転職できる?仕事内容や必要な専門技術を解説

産業ごとに異なる専門装置の知識

働く業界によって、必要な専門知識も変わってきます。たとえば半導体工場では、真空装置やクリーンルーム内での作業に関する知識が必要です。医薬品工場では、分析装置の扱い方や充填機のメンテナンス技術も必要になります。

当社では、石川、福井、富山、愛知の4拠点で、それぞれの地域の産業に合わせた実機を使った研修を行っています。たとえば、石川県では半導体、富山県では製薬、福井県では繊維・電子・自動車部品、愛知県では自動車関連の産業が盛んです。働く場所によって学ぶ内容が変わるため、入社前にどの分野に配属される予定なのかを確認しておくと安心です。

クリーンルーム内でタンクの状態を確認する研修の様子

未経験から予防保全のエンジニアを目指す方法

文系出身の方や、製造の現場・接客業などから転職を考える方が、保全の技術を身につける方法はいくつかあります。書籍やオンライン教材で学ぶ「独学」、スクールなどで学ぶ「民間の教育機関」、そして働きながら学ぶ「雇用型の研修(職業訓練や企業内研修など)」です。それぞれ、かかる費用や学べる内容、学ぶ期間が異なるため、自分に合った方法を選ぶことが大切です。企業が従業員に技術を身につけてもらうために、厚生労働省の人材開発支援助成金のような制度を活用しているケースもあります。

自分にどの方法が向いているか迷う場合は、下記の記事も参考にしてください。

【関連リンク】設備保全に向いている人の特徴とは?未経験からエンジニアを目指すための適性チェック

【関連リンク】「直す仕事」に未経験から挑戦するには?種類と転職を成功させる方法

働きながら学べる「実務×スクール育成制度」

一般的なスクールに通う場合、数十万円ほどの受講料を自己負担することが多くあります。仕事を続けながら通うとなると、時間のやりくりも簡単ではありません。

それに対して、企業に雇用されながら給与を受け取りつつ技術を学べる方法もあります。これを当社では『実務×スクール育成制度』と呼んでいます

当社の正社員として入社し、実機を使っての研修を経て技術を習得し、長く活躍できるキャリアを目指せる働き方を用意しており、雇用の安定を方針として掲げています。研修施設「AOCテクニカルセンター(ATC)」では、1.5ヶ月にわたる長期研修の間も給与を受け取りながら、マンツーマンで指導を受けられます。

研修は「有接点シーケンス制御」「真空装置の取り扱い」「機械調整」という3つの技術を中心に組み立てられており、機械保全技能士2級程度の技術習得を目指します。マンツーマン指導のため、わからないところをそのままにせず、一つずつ確認しながら進められる点も特徴です。研修を含めた働き方全体のイメージは、下記の記事も参考にしてください。

【関連リンク】保全エンジニアがきついと言われる理由とは?未経験から定着するための環境選び

当社では、未経験からでも段階的に技術を身につけ、現場で活躍できるエンジニアの育成に取り組んでいます。研修の内容や具体的なキャリア形成については、以下のページでご確認いただけます。

予防保全の仕事に関するよくある質問

Q. 未経験(文系や接客業)からでも本当に技術は身につきますか?

意欲のある方を歓迎している企業は多く、これまでの職歴も前向きに活かせます。さまざまな業界で活躍できる保全エンジニアを、当社では『クロスオーバーエンジニア』と呼んでいます。文系出身の方も多数活躍しています。

もちろん、最初から機械や電気にくわしい人ばかりではありません。入社した当初は専門用語が覚えられず、戸惑う場面もありますが、先輩社員のサポートを受けながら、研修を通して一つずつ身につけていけます。前職が接客業や販売職だった方は、お客様対応で培った丁寧な仕事の進め方が、点検作業にも活かされることがあります。

Q. 交代制勤務や深夜勤務がある場合の手当はどうなりますか?

22時から翌5時までの勤務には、労働基準法に基づき25%以上の割増賃金(深夜手当)が支払われます。割増の種類ごとの割増率は次のとおりです。

時間外労働
(法定労働時間を超えた部分)

25%以上

深夜労働
(22時〜翌5時に働いた部分)

25%以上

法定休日労働
(法定休日に働いた時間)

35%以上

時間外労働+深夜労働
(残業が深夜に及んだ場合)

50%以上

出典)時間外・休日労働と割増賃金 – 確かめよう労働条件|厚生労働省

Q. 地方で勤務する場合、生活面でのサポート(寮など)はありますか?

当社では、生活家電(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)付きの個室寮(1R・1K)を完備しています。敷金・礼金不要で即日入居・就業にも対応しているため、引っ越しの初期費用を抑えられ、地元を離れて新しい環境で働きたい方にとっても始めやすくなっています。地方は都市部に比べて家賃や物価が控えめなため、同じ収入でも生活費の支出が少ない分、自由に使えるお金が多くなるケースもあります。

Q. 予防保全の技術を身につけたあと、キャリアはどう広がりますか?

まずは日常点検や消耗部品の交換といった基本の作業から始め、少しずつ電気回路や専門装置の知識へと範囲を広げていくのが一般的な流れです。経験を積んだ後は、機械保全技能士などの国家資格の取得を目指す道や、予防保全だけでなく事後保全にも対応できる技術者として現場を任される道もあります。身につけた技術は特定の工場だけで通用するものではなく、半導体や製薬、自動車部品など、他の業界の工場に移っても活かせる点も特徴です。焦らず段階を踏んで、自分のペースで技術の幅を広げていくとよいでしょう。