未経験から設備保全エンジニアを目指す方法と必要なテクニカルスキル

工場では、たくさんの機械が休むことなく動き続けています。もしその機械が急に止まってしまうと、生産そのものが止まってしまいます。機械の状態を点検し、故障を防ぎ、トラブルが起きたときにはすぐに原因を調べて直す仕事、それが「設備保全」です。

この記事では、設備保全の現場で必要になる技術を、機械・電気・先端装置という3つの分野に分けて、できるだけわかりやすく紹介します。あわせて、未経験からこれらの技術を身につける方法や、身につけやすい環境の選び方もご紹介します。文系出身の方や、これまで製造の現場で別の仕事をしていた方にも読みやすい内容にまとめました。

具体的には、機械の点検や工具の使い方といった機械保全の技術、回路図やテスターを使った電気保全の技術、半導体などの先端現場で必要な真空装置の技術、そして未経験からこれらを身につける具体的な流れを、順番に紹介していきます。

※本記事に記載されている労働関係法令や各種制度に関する内容は、記事執筆時点での一般的な情報です。実際の労働条件や契約内容は、就業先の企業や派遣会社によって異なります。詳細は最新の募集要項をご確認ください。

保全の現場で、機械や電気を扱える人材が必要とされている理由

厚生労働省が毎月発表している一般的な求人の状況を見る指標に、有効求人倍率があります。令和8年6月分のデータでは、有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍でした。仕事を探している人1人に対して、1.18件の求人があるという意味です。

出典)一般職業紹介状況(令和8年6月分)について

この中でも、機械の点検や修理、電気設備の管理といった仕事は、全国的に人手が足りていない分野の一つです。全国にある工場の数だけ設備保全の仕事があり、未経験からでも挑戦しやすい仕事です。

設備保全の考え方には、大きく分けて2つあります。

事後保全

機械が実際に止まってから、原因を調べて直す考え方です。

予防保全

機械が壊れる前に、定期的な点検や部品交換をして故障を防ぐ考え方です。

近年は、突発的な故障で生産が止まることを防ぐため、事後保全だけに頼らず予防保全に力を入れる工場が増えています。日々の点検を積み重ね、機械の小さな変化に早く気づくことが、大きなトラブルを防ぐことにつながります。

どちらの考え方も状況に応じて使い分けることが、設備保全の仕事の基礎です。詳しい仕事内容を知りたい方は、設備保全は未経験から転職できる?仕事内容や必要な専門技術を解説もあわせてご覧ください。

機械の仕組みを理解し、正しく工具を使う「機械保全」の技術

機械保全は、機械を分解し、部品を点検し、正しく組み立て直す仕事です。まずは、現場でよく使う工具の代表例を紹介します。

ノギス

部品の長さやすき間をミリ単位で正確に測る道具です。

トルクレンチ

ボルトを決まった強さでしっかり締めるための工具です。

精密測定器

目に見えないほどわずかなゆがみやずれを、数字で確認する装置です。

スパナを使った設備メンテナンス作業の様子

工場の機械には、共通して使われている部品がいくつもあります。それぞれの点検のポイントを簡単にまとめました。

ベアリング(軸受)

回転する部分をなめらかに動かす部品です。異音や発熱がないか確認します。

歯車(ギア)

力を伝える部品です。歯の欠けやすり減りがないか確認します。

チェーン

動力を伝える鎖状の部品です。たるみやさびがないか確認します。

コンベヤ

部品や荷物を運ぶ搬送装置です。ベルトのずれや駆動部の異音を確認します。

たとえば、ベアリングから聞き慣れない音がしているのに気づかずそのままにしておくと、部品が破損するだけでなく、機械全体が急に止まってしまうこともあります。小さな変化を見逃さないことが、機械保全の技術の質を左右します。

国が定める技能検定制度には「機械保全」の職種が設けられており、自分の技術レベルを確認する一つの目安になります。

出典)(公社)日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定」

回路図を読み解き、原因を特定する「電気保全」の技術

電気を扱う作業は、一歩間違えると大きなケガにつながる危険があります。そのため、電気保全の技術を学ぶときは、まず安全教育を受け、通電中の作業にどんな危険があるかをしっかり理解することが第一歩です。

次に必要なのが、回路図を読む力です。回路図には、スイッチやランプ、モーターなどを表す記号(電気シンボル)が使われています。この記号の意味が分かるようになると、機械のどこにどんな部品があるかを図面だけで理解できるようになります。

制御盤内部の電気配線を確認する様子

現場では、テスターと呼ばれる測定器を使って、電圧が正しく流れているか、導通を確認する作業もよく行います。さらに、有接点シーケンス制御と呼ばれる仕組みの基本も押さえておきたいポイントです。

自己保持回路

スイッチを一瞬押しただけで、その後も動き続ける回路です。

タイマー回路

一定の時間が経ってから動き出す、あるいは止まる回路です。

フリッカ回路

ランプなどが点滅を繰り返す回路です。

インターロック回路

同時に動いてはいけない機械同士が、同時に動かないようにする安全のための回路です。

これらの仕組みが分かると、機械が思った通りに動かないときの原因を、図面を見ながら一つずつ探せるようになります。回路図を正確に読めないまま作業を進めると、原因ではない部品を交換してしまい、余計な時間や部品代がかかってしまうこともあります。図面をもとに筋道を立てて調べる力は、電気保全の現場でとても役立つ技術です。

半導体など先端産業の現場で必要とされる「真空装置」の保全技術

半導体や医薬品、自動車の精密部品などを作る工場では、空気中のごくわずかなちりやほこりも許されない「クリーンルーム」と呼ばれる特別な部屋で生産が行われています。こうした現場では、真空装置と呼ばれる特殊な設備を保全する技術も必要です。

クリーンルームで防塵服を着用して作業する様子

クリーンルームでは、専用の防塵服を着て入室し、髪の毛1本、ほこり1つが製品の不良につながらないよう、細心の注意を払いながら作業します。真空装置の保全には、次のような作業があります。

真空排気系点検

空気を抜いて真空に近づける装置が正しく動いているかを確認する作業です。

チャンバーメンテナンス

部品を加工する箱(チャンバー)の清掃や部品交換を行います。

Heリークチェック

ヘリウムガスを使って、ごくわずかな空気の漏れがないかを調べる検査です。

国内各地で半導体工場の新設・増設が進んでおり、装置を維持・管理できる技術者の必要性は今後も続きます。

出典)経済産業省「半導体・デジタル産業戦略検討会議」

先端産業の現場で働くには、機械や電気の基礎に加えて、こうした専門的な技術も少しずつ身につけていきます。

未経験から保全の技術を着実に身につける3つの方法

1. 職業訓練校・専門学校で学ぶ

雇用保険を受給できない方を対象とした国の『求職者支援制度』では、無料の職業訓練と就職支援が受けられます。さらに『本人収入が8万円以下』『世帯の金融資産が300万円以下』などの要件を満たせば、職業訓練受講給付金の支給も受けられます(給付金の対象外であっても訓練の受講は可能です)。

出典)厚生労働省「ハロートレーニングについて知る」

2. 製造現場のオペレーターから段階的に学ぶ

機械を動かすオペレーターとして現場に入り、先輩の点検や修理の様子を見ながら、少しずつ保全の知識を覚えていく方法もあります。現場で実際に機械に触れながら学べるところは良い点ですが、学べる内容や習得までのスピードは、配属された現場や教える人によって差が出やすい点も知っておきましょう。

3. 研修制度が充実した企業に就職し、給与をもらいながら学ぶ

学習期間中の収入が心配な方には、研修制度が充実した企業に就職し、給与を受け取りながら技術を身につける方法もあります。

エー・オー・シー(以下、当社)では、座学だけでなく現場で使う機械に触れながら学べる独自の育成制度を「実務×スクール育成制度」と呼んでいます。実機(実際の機械)を使った研修を通じて、機械保全・電気保全といった技術を段階的に身につけられる仕組みです。

収入を確保しながら技術を身につけたい方には、スキルなしからエンジニア転職を実現する「給与をもらいながら学ぶ」最短ルートや、スキルなしから手に職をつける方法!給料をもらいながら学べる保全エンジニアの働き方も参考になります。

3つの方法には、それぞれ良い点と気をつけたい点があります。費用を抑えて学びたい方は1つ目、現場の雰囲気を確かめながら少しずつ学びたい方は2つ目、収入を確保しながら本格的に技術を身につけたい方は3つ目の方法が向いています。自分の生活スタイルや、学びたいペースに合わせて選ぶとよいでしょう。

保全の技術を効率よく身につけるための環境の選び方

これから保全の技術を身につける場所を選ぶときは、次の3つのポイントを確認しておくと安心です。

ポイント1:実機を使った実践研修施設があるか

教科書だけでなく、実際に動く機械を使って練習できる環境かどうかは、身につく技術の質に大きく関わります。図で仕組みを覚えるだけでなく、自分の手でボルトを締めたり、テスターを当てたりする経験を積むことで、現場での対応力が向上します。

ポイント2:地域の産業特性に合わせた技術を学べるか

日本では、地域ごとに盛んな産業が異なります。就職や転職を考えている地域で、どんな技術の需要が多いかを知っておくと、その後のキャリアにも役立ちます。

石川

半導体

富山

製薬

福井

繊維・自動車部品

愛知

自動車

ポイント3:長く安心して働ける環境かどうか

当社では、正社員として入社し、実機(実際の機械)を使っての研修を経て技術を習得し、長く活躍できるキャリアを目指せる働き方を用意しています。研修中も給与が発生するため、生活の不安を抑えながら技術の習得に集中できます。

当社が運営する「AOCテクニカルセンター(ATC)」は、石川、福井、富山、愛知の4拠点にある実践型の研修施設です。実機を使い、1.5ヶ月の長期研修を、マンツーマンに近い指導体制で行っています。ここでの研修を経て、機械・電気・先端装置など、複数の分野の技術を身につけた技術者を、これまで多く育成してきました。このように、さまざまな業界で活躍できる保全エンジニアを、当社では『クロスオーバーエンジニア』と呼んでいます。

経験豊富な指導員が横につき、機械の分解や回路図の読み方を、実際の手順に沿って一つずつ教えます。分からないところをその場で質問できる環境なので、未経験からでも着実に技術を積み上げられます。

AOCテクニカルセンターの外観

よくある質問

文系出身や完全未経験でも、保全の技術は身につきますか?

はい。学ぶ環境と時間さえ確保できれば、文系出身の方や製造の現場が初めての方でも技術を身につけることは十分に見込めます。実際に、当社の研修を経て現場で活躍している技術者の多くは、入社時点では機械や電気の知識がまったくない状態からスタートしています。文系からのキャリアについては、文系から目指す一生使えるスキルとは?AI時代にも強い職種と選び方もあわせてご覧ください。

保全の仕事の将来性や、その後のキャリアパスが気になります。

工場の自動化が進むほど、機械や電気の仕組みを理解し、トラブルに対応できる人材の重要性は高まっていきます。まずは機械保全や電気保全の基礎を身につけ、その後に半導体などの先端装置の技術へと範囲を広げていくキャリアの積み方が一般的です。より詳しいキャリアの積み方は、20代スキルなし転職の正解!給与をもらいながら保全エンジニアになる方法で紹介しています。

遠方に住んでいますが、転職や就職は可能ですか?

生活家電(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)付きの個室寮(1R・1K)を完備しています。敷金・礼金不要で即日入居・就業にも対応(※友人・恋人の連れ込みは原則不可)しているため、転居をともなう就職でも安心して技術の習得に集中できます。また、地方の製造拠点周辺へ赴任する場合、同じ収入でも生活費の支出が首都圏より少ない分、自由に使えるお金が多くなります。詳しい条件は、募集要項でご確認ください。

設備保全の技術は、機械・電気・先端装置と幅広い分野に広がっていますが、どれも一つずつ着実に積み上げていける技術です。まずは基礎となる機械保全や電気保全から学び始め、少しずつ専門性の高い分野へ範囲を広げていくと、無理なく技術を身につけられます。

保全の仕事や、給与をもらいながら技術を身につける働き方について、さらに詳しく知りたい方は専用ページをご覧ください。