工場の自動化が進むにつれて、ロボットに関わるエンジニアの役割がますます重要になっています。一般的にロボットエンジニアというと、新しいロボットそのものを開発したり設計したりする仕事を指します。
これに対して、製造業の生産現場で活躍する保全エンジニアは、制御盤やモーターなどの機械に直接触れて保守や修理を行う役割を担います。また、部品を交換したあとにロボットの動作のズレを微調整するなど、設備が正しく動くように現場を管理します。
この記事では、ロボット開発の仕事と現場を支える保全エンジニアの違いに触れます。あわせて、未経験からでも挑戦しやすく、需要が急増している保全エンジニアの仕事内容や目指す方法をご紹介します。
※本記事に記載されている労働関係法令や各種制度に関する内容は、記事執筆時点での一般的な情報です。実際の労働条件や契約内容は、就業先の企業や派遣会社によって異なります。詳細は最新の募集要項をご確認ください。
目次
ロボットの開発設計と現場を支える保全エンジニアの違い
IT業界のソフトウェア開発は、コンピューター上のシステムを作る仕事です。それと同じように、ロボットエンジニアは新しいロボットの頭脳や仕組みを作り出す仕事です。
これに対して、製造業の生産現場で活躍する保全エンジニアは、制御盤やモーターなどの機械に直接触れて保守や修理を行う役割を担います。
厚生労働省が運営する職業情報提供サイトにおいて、この現場を支える仕事は「産業用ロボットの保守・メンテナンス」や「機械保全工」として分類されています。生産活動の根底を物理的に支える重要な職業であると定義されています。
製造ラインで動く産業用ロボットは、放っておけば自動で動き続けるわけではありません。日々の運用において、人間による細やかな管理が必要です。ロボットを維持する保全エンジニアの業務は、大きく「予防保全」と「事後保全」の2つに分かれます。
ロボットをゼロから生み出す開発職も魅力的です。しかし、機械の構造を深く理解し、現場で直接トラブルを解決する保全エンジニアもまた、製造業に欠かせない高い専門性を持つ職種です。
工場の自動化が進む現代において保全の需要が拡大している
現在、働く人の数が減っていることを背景に、製造現場の自動化が進んでいます。それに伴って、ロボットなどの設備を管理する保全エンジニアの需要が大きく拡大しています。
この産業構造の変化は、一般社団法人日本ロボット工業会が発表したデータにも表れています。自動化の需要が回復したことなどに後押しされ、産業用ロボットの需要は大きく増加しています。
ロボットを導入する数が増えるほど、その設備を維持し、管理し、トラブルを解決する人間の手が同じように必要になるという構造が製造現場にはあります。工場の機械化を進めると、ロボットの保全を行うエンジニアが大勢必要になるという意味において、当社独自の定義としてこれを「省人化投資のパラドックス」と呼んでいます。機械化が進むほど、機械を直せる人材の価値が高まる現象が起きています。
保全エンジニアとして働く利点と長期的な将来性
ロボット開発には高度なプログラミングや設計の専門知識が必要です。しかし、保全エンジニアは実機(実際の機械)に触れながら段階的に技術を身につけることができます。コンピューターが生産計画を計算しても、実際の製造現場では部品のすり減りや配線の断線、センサーのズレが発生します。そのため、機械に触れて修理を行う保全技術の重要性は将来にわたって続きます。
専門的な技術を習得し長期にわたり活かせる
現場で習得する能力は、特定の企業でのみ通用する知識ではなく、製造業全般で応用できる専門技術です。
たとえば、工場の自動化において広く用いられる有接点シーケンス制御の技術が挙げられます。これは、電気をつなぐ部品を組み合わせ、決められた順序で機械を動かす方法です。電気回路の作成や、測定器を使った適切な電圧や電流の測定技術は、あらゆる自動化機器の基本となる共通スキルです。
また、歯車の調整やシリンダーの速度調整といった機械に関する知識も大切です。精密な測定器を使った細かな調整や、正確な締め付け作業は、AIには代わることが難しい技術です。デジタル技術が進化しても、最終的に機械を動かすのは人間の手による精密な作業です。そのため、これらの専門技術は長く活かせる働き方につながります。
衰退産業から成長産業へのキャリアチェンジのパスポートとなる
保全技術の大きな特徴は、特定の業界にとらわれない職種です。さまざまな業界で活躍できる保全エンジニアを、当社では「クロスオーバーエンジニア」と呼んでいます。
産業用ロボットや制御盤、ベルトコンベヤといった技術は、自動車産業をはじめ、半導体、製薬、電子部品、食品など、様々な分野の製造工場で共通して使われています。そのため、機械の保全と電気の基礎的な技術を習得していれば、需要が高まっている別の成長産業へと活躍の場を移すことができます。つまり、成長産業への移動を実現するためのパスポートとして機能します。
未経験から保全エンジニアを目指すための3つの方法
保全エンジニアは文系出身者や製造現場の経験がない状態からでも、専門技術を身につけるための道は整っています。ここでは、未経験からプロフェッショナルを目指すための3つの方法をご紹介します。
現場の作業を通じて機械に慣れ、少しずつ保全の仕事を学ぶ
学校で集中的に基礎知識を学ぶ。条件を満たせば給付金を利用できる
当社の正社員として入社し、研修施設で学んでから現場に出る
製造オペレーターとして現場に入り段階的に保全技術を学ぶ
一つ目の方法は、工場で特定の作業を繰り返す仕事や機械を操作する仕事に就くことです。現場での経験をもとにして、段階的に保全技術を学ぶ道です。
まずは自分が担当する装置の操作に慣れます。日常の点検や清掃といった業務を通じて、機械の構造を現場で直接体験します。この過程で、機械の正常な稼働音や振動を感覚的に覚えます。そうすることで、異常が発生した際に早く気づく力が養われます。現場の知識を深めながら、少しずつ保全チームの補助として工具の使い方を任されるようになり、実際の業務を通じて技術を習得することが期待できます。
専門のスクールや職業訓練校に通い基礎的な知識を身につける
二つ目の方法は、民間の専門スクールや、国や自治体が運営する公共職業訓練校に通うことです。集中的に基礎的な知識を身につける道です。
自己資金で受講費を支払うほかに、一定の条件を満たす場合は、厚生労働省が管理する給付金を活用して学ぶことができます。中長期的なキャリア形成を支援する専門実践教育訓練給付金の指定講座を受講する場合、すべての条件を満たすと訓練にかかった費用の最大80%、上限64万円がハローワークから支給されます。
働きながら給与を得て学ぶ育成型のサービスを活用する
三つ目の方法は、現場に配属される前に、企業の研修施設で実践的な技術を学ぶ育成型のサービスを活用するという道です。これを当社では「実務×スクール育成制度」と呼んでいます。
就業しながら研修施設で学ぶことができるため、自己資金を持ち出す必要がありません。学習期間中の生活費に対する懸念を減らせる点が特徴です。当社の運営するAOCテクニカルセンターでは、入社直後から1.5ヶ月の長期研修を実施しています。この研修期間中も給与が発生する状態で学習に専念できます。
現在、この研修施設は石川、福井、富山、愛知の4拠点にて展開しており、座学ではなく、実機を用いたマンツーマン指導を実施しています。研修のカリキュラムは、電気回路の知識の習得、真空装置の取り扱い、機械の調整といった技術を中心に構成されています。電気回路の作成や、半導体製造に欠かせない真空装置の日常点検など、実践的指導を通じて、現場で活躍できる人材の育成を目指しています。

保全エンジニアに向いている人の特徴と求められる適性
機械や電気の専門教育を受けていなくても、個人の持つ適性や学ぶ姿勢によって、エンジニアとしての成長は大きく変わります。現場で求められている人の特徴をご紹介します。
現場での地道な作業も含め技術習得に対する意欲が高い人
設備の保全業務は、常に清潔な環境で行われるわけではありません。設備の狭い隙間に潜り込んだり、油の汚れに対応したりする実際に機械や設備に触れる作業が含まれます。そのため、「あの機械を直せるようになりたい」といった具体的な目的意識を持ち、技術を身につけようとする意欲が高い人物が適しています。
未経験から挑戦する場合、最初は複雑な配線図や機械の構造に戸惑うケースもあります。しかし、最初から完璧を求めず、説明書を読み解きながら段階的に学ぶ姿勢を持つ人物は、着実に技術を定着させることが期待できます。
過去の異業種での経験や対人スキルを前向きに活かせる人
一見すると機械のみを相手にする職種に思われがちですが、実際には人とのコミュニケーションが重要な役割を果たします。
設備が停止した際、保全エンジニアは機械を直接操作している担当者から情報を聞き取らなければなりません。停止する直前にどのような異音がしたかといった情報を、正確に把握する必要があります。そのため、営業や接客業など、過去の別の業界で身につけたコミュニケーション能力は、現場でのスムーズな意思疎通やチームでのトラブル対応において大きな強みになります。別の業界での経験は決して無駄にならず、前向きに活かせる要素として評価されます。
ロボットに関わる保全エンジニアのよくある質問
エンジニアへの挑戦を検討する方が抱きやすい疑問について回答します。
文系出身や全くの未経験からでも保全エンジニアになれますか?
当社では意欲のある方を歓迎します。適切な環境で順序立てて学べば、文系からでも段階的に技術を習得し、現場で活躍することが十分に期待できます。
実際に、当社の研修施設では理系の知識を持たない文系出身者や、未経験から挑戦する方が多数受講しています。工具の名称や使い方、電気回路図の見方といった基礎から実機を用いて学ぶことで、安全に作業を進める知識と技術を身につけています。最初は大変だったと感じる受講生も、反復学習を通じて着実に技術を定着させ、現場で働くエンジニアとして多数育っています。
保全エンジニアとして働く際の雇用形態はどうなりますか?
保全エンジニアとして働く際の雇用形態には、メーカーに直接雇用される正社員や契約社員など、さまざまな形態があります。
当社では、正社員として入社し、実機を使っての研修を経て技術を習得し、長く活躍できるキャリアを目指せる働き方を提供しています。
当社のご紹介する案件の中には生活家電(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)付きの個室寮(1R・1K)を備えたものもあります。ご自身のこれからの働き方や生活様式に合わせて、適切な雇用形態や労働環境を選ぶことが大切です。

